いつも通りYouTube見てたらもこうの「WHITEALBUM2」実況がおすすめに出てきた。なんかもこう毎年やってんな。
まあ、でも、毎年やりたくなる気持ちもわからなくはない。「冬」という季節の、まあ、5分の1くらいは「WHITE ALBUMの季節」になるみたいな感覚があるよね。
そういえば自分がシェアハウスで「WHITE ALBUM2」やってた頃からはちょうどくらい1年経つらしい。さすがに早すぎるッピ……。
毎日ふれにあさんと時間決めて、シェアハウス行って、ちょこちょこ進めてたのめちゃくちゃ楽しかったね。
あ、でも、主に一緒にやってたのはふれにあさんだけど、リビングでやってたからその時々に違う人がいて、なんか、その場にいる人に応じて違うゲーム体験ができていた気がして、そこも面白かったところなんよね。
ふれにあさんはキャラにキレがちで(一緒にキレてみると結構楽しい)、ちろちゃんは自分には理解できないタイプの感情移入をして(たまに叫ぶ)、ホリィ・センはたまに後ろからボソッと的確なコメントをくれて、新萬とはのんびりできて(麻里さん最後まで一緒にやりたかった)、なめしはうるさい(7割くらいは肯定的な意味)。
自分はおおむね作品世界にのめりこむタイプで、初めは誰かと一緒にゲームするのってなんかなぁと思ってたんだけど、やってみると意外とのめりこみと他の人と楽しむのって両立できるっていう新たな発見があった。
むしろ、ヤイヤイ野次を飛ばすことで自分に足りてない読み方を補完できた気もするし、ダレる部分とかしょうもない部分を別の楽しみ方に変換できるし、後は本当にのめりこむ部分って周りの人が何してるかとか聞こえなくなるから割といいとこどりかも。
さすがにもこうみたいに毎年はやらないけど、たまに振り返りでやりたいかもなー。
ここからは個人的な所感など。デカいネタバレは伏字にして〼
introductory chapterに関しては、よくできた三角関係のお手本みたいな話だったと思う。恋慕と友情の間での絶え間ない摩擦。ボタンを掛け違うような想いのすれ違い。
それぞれがそれぞれの心に消えない傷を負って、そしてたどり着く冒頭の飛行機のシーンは様式美の極致みたいなもので、単体で十二分に作品としての完成度は備えていると思う。
個人的な話をすれば、イントロの物語は当然俺ガイルと重ね合わせていた。
辿る過程は俺ガイルの方が好きだけど、結末に関してはさすがにこっちの方が好き。というか、自分は奉仕部の3人が空中分解する結末を望んでいた節があったので、何年か越しにあの時思い描いた理想の結末を見たような気がしたよ。
話を戻すと、そもそも、introductory chapterに関してはプレイヤーに選択肢はなく、ただ眺めることしかできない。この部分だけ切り取るともはやゲームなのかもよくわからないが、ただWHITE ALBUM2というゲームにとって、introductory chapterが非常に重要な位置を占めるのは言うまでもない。
まず、春希と雪菜とかずさの3人にとって、introductory chapterの物語が持つ意味はあまりにも大きい。それはもはや取り戻せない青春であり、心の奥でキラキラ輝く美しい思い出であり、一生消えない傷であり、自らを未来永劫縛り続ける原罪だ。
そして、この「罪」というのは、「WHITEALBUM2」に通底するテーマだ。introductory chapteで生み出された原罪に対して、続くclosing chapter、codaでどのように向き合うか、というのがこのゲームの骨組みだろう。
そして、彼らの「罪」はあまりにも重い(と彼らが思いこんでいる)からこそ、その「罪」を贖うというよりはむしろ、「罪」に対して何を「罰」として引き受けるか、「罪」に対して何を「罰」として見出すか、という方向性で物語は進んでいく。
そんな美しく完成された原罪の次に始まるのがclosing chapter。3人の墓標である飛行場での別れの時から3年経った大学生編。
ただclosing chapterの初めの方は少し当惑した記憶がある。あれほど重い3人の物語をイントロでやった後で、今さら新キャラてそんなん言われてもサ、ヒロイン攻略みたいな感じだされてもサ、頭のキリカエってもんができませんよ……みたいな感じで。
まあ、結論を言えば、このゲームで一番楽しかったのはclosing chapterの千晶ルートなんですけどね。千晶ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ……お前ってやつはホンマ、ほんま……。なんちゅうか、さすがに丸戸先生の掌の上で転がされすぎ感は否めないけど、ホンマによくできた作品では掌の上で転がされること自体が楽しみの一つみたいなところもある。
【千晶ルート(とココロコネクト)のネタバレあり(反転)】
千晶を見ていると、色々なキャラのことを思い出す。いやまあ、ここまでのやつは中々いないけどさ、千晶の抱えてる問題と近いものを持ってるやつは結構いるというか。自分は千晶を見ながらココロコネクトの永瀬伊織のことをずっと考えていたよ。
2人の共通点は、自分の空っぽさと、それを取り繕う演技の上手さ。2人の違いは、それを自分自身の問題として捉えているかどうか。永瀬伊織は【人格入れ替わり】を通して、元来の「空っぽさ」「アイデンティティの不安定さ」が増幅され、苦悩する。まあ、厳密な身心二元論者でもない限り、自分の身体を失ったら精神としての「私」も危機にさらされる、ってのはそりゃそうだって感じではある。
そして、ヒトランダムの最後で一度はその「空っぽさ」に折り合いをつけたけれど、その後も物語を通して何度か蒸し返して悩み続ける。
展開としてはまたか……とはなるけど、それはそれとして説得力があるのは、自分の自身の「空っぽさ」みたいなのがそれだけ人間にとって切実なテーマだからなんでしょう。(この辺の話は全て自分が思う「人間」、つまり自分自身の話をしています。)
千晶はそこを逆手に取ったキャラクターで、「空っぽさ」に悩まないという意味で「人でなし」だ。まあ、それ以外でも性格面も普通に人でなしなんだけどさ。それを踏まえて、本当にざっくり言ってしまえば、千晶ルートは愛の力で「人でなし」が「人」になる物語、とすると魅力の5%も残っていような……。なんか何らかの傲慢?な欲望がだだもれな感じもするし。
いやー、これプレイした直後も思ったけど、なんか千晶ルートってプレイしてる時の感動と、冷静に振り返った時の感想のズレがかなり極端なんだよね。
多分自分のしょぼい構造化から零れ落ちた部分というか、そもそも構造に回収されない細部にテキストの魔力がかかってるタイプの物語なんだろう。もっかいやった方がいいかもなー。
【千晶ルートネタバレ終わり】
他の2人のルートもめっちゃいいよね。小春ルートは優等生後輩を穢すし、麻里さんルートは優秀上司を泥沼にひきずりこむしで、両方背徳的な昏い歓びに満ちてる。
やったことないからわからんけど多分この2人のルートが正統にエロゲっぽいんじゃないかな。
まあ、全体的にサブヒロインルートは欲望だだもれクズ春希くんを見る楽しみがあるし、反対に雪菜ルートは適切に欲望を節制した「正しい」春希くんルートって感じがする。
この辺やってるときは本当に夢中で楽しんでたなぁ。ただ、それはそれとして、このあたりで1つよくわからなくなってきたことがあって混乱もしてた。
それは、サブヒロインルートのごみくず春希くんと、雪菜ルートの一途な春希くん、どっちが本当の春希くんなの?ってやつ。
多分これはエロゲとかノベルゲー熟練者からしたらナンセンスな問いなんだろうけど、この時の自分は割と本気でよくわからなくなっていた。
その理由の一つは、単純に自分が選択肢を選んで物語を生成するスタイルに慣れてないこと。で、もう一つの理由は多分自分のプレイスタイル。この時の自分のプレイスタイルは、「1周目はなるべく自分の感情を排除して、その時々で最も春希くんがやりそうな選択肢を選ぶ」というものだった。
もちろんここでの春希くんは「俺の思う春希くん」だから、厳密にいえば感情の排除とは?って感じではあるけど、でもなるべく春希くんをちゃんとエミュレートしようと努力してた。
だから、選択肢が出たら毎回「いや、春希なら絶対こうする!」とか「春希はこんなことしねぇ!」とか(主に自分が)叫んでふれにあさんとバトってた。何ならたまに「春希はどっちもやらねぇよ!」みたいな選択肢が出てきて怒ってた記憶もある。
この傾向はcodaに入るあたりから加速していくというか、もはやその辺りからはもう、春希くんなのか自分自身なのかの境界もあいまいになって、
「自分ならこうする(してしまう)」「春希はこうあるべきだ」「でも、春希ならこうなっちゃうかもな……」「自分ならこうありたい」「春希にはこうあってほしいねん」「頼む……春希、俺はお前を、いや自分を……?信じたい、でも……」
みたいなのが混ざり合ってもはやなにがなんだかよくわからなくなっていた。今振り返っても正確には思いだせないけど、これはかなり稀有な体験だったことは間違いないと思う。
で、そもそもなんでこんなプレイスタイルを取って、春希くんと混然一体になる状態まで行きついたかって言ったら、まあ、自分の性格とか物語受容の傾向みたいなんは当然あるんだけど、このゲームの構造に要請された部分も少なからずあると思う。
って話あたりで長くなってきたので続きはまた今度……。